最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)347号 判決 1966年11月18日
上告人
勝山房江
上告人
勝山多恵
右両名訴訟代理人
山本敏雄
小泉要三
被上告人
中島忠見
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人山本敏雄の上告理由(1)、(2)について。
他人の代理人と称して金銭消費貸借契約を締結し、かつ、自らその他人のため連帯保証契約を締結した者が、債権者の提起した右連帯保証債務の履行を求める訴訟において、右代理権の不存在を主張し、主たる債務の成立を否定し、ひいては連帯保証債務の成立を否定することは、特別の事情のない限り、信義則上許されないものと解するのが相当である。いま、これを本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、訴外亡勝山双隈は、訴外宮本及び鎌苅の代理人と称して被上告人に対し金員借入の申込をなし、宮本らの代理人として被上告人と金銭消費貸借契約を締結するとともに、宮本らの債務につき連帯保証をする旨の契約を締結したというのであるから、勝山の相続人たる上告人らが、右連帯保証債務の履行を求める本件訴訟において、被上告人に対し、勝山の右代理権の不存在を主張して主たる債務の成立を否定し、さらには本件連帯保証債務の成立を否定することは許されないものというべきである。したがつて、この点に関する原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解であつて、採るをえない。
同(3)について。
記録によるも、上告人らが原審において所論消滅時効の抗弁を提出した形跡は認められないから、原判決に所論判断遺脱の違法はなく、論旨は採るをえない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)